男からすると女という生き物は全く理解できるものでは無く、扱い方がとても難しい。機械であればどこが調子悪いのかを調べて、その部分に少し手をかけてみればおおよそ治すことができるのだけれど、そういうものではない。そもそもどこが調子悪いのかを知ることができないのである。調子悪いところがあるのかどうかでさえもこちらにはわからない。それであるから作戦の立てようもなく、攻撃の仕方も守り方もわからない。とにかく敵 […]
生まれ育った町と山を隔てて反対側の山あいの町は、昔から漆器や和紙や刃物や眼鏡などの産地で家内制手工業が集積された地域である。こんなにも技術密度が高い(人口密度は呆れるくらいに低い)町というのは日本いや世界で見ても極めて珍しいということで、ここ数年はこういう家内制手工業の工房をオープンにして人に見てもらおうという取り組みが行われている。これまで人に見せることがなかった仕事場なのに、何でも見て、何でも […]
ホスピス療養型の病棟の入院患者の食べたいものを教えてもらって、管理栄養士、看護師、調理師、医師などで話し合いをしてその料理を提供するという取り組みを、週に一度実施している病院があるという。大阪の淀川キリスト教病院。この本は、ここに入院している14人の患者とその方たちの食べたいものを提供する医療従事者の方を取材することによってできた本である。そのうちのお一人は残念ながら食べたいものを口にする日が訪れ […]
斜陽産業と言われている林業であるが、実は無茶苦茶格好良くて素敵な仕事。山だけではなく川や海を守るために欠かせない大切な仕事。三重県の山奥で暮らしていた三浦しをんさんの祖父の暮らしや仕事を綴ったとされるお話しである。昔からの知恵で作られた仕組みというものが世の中にはたくさんあって、それらのひとつひとつに奥深い神秘的な歴史がある。このお話しを基に撮影された「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」も素敵 […]
伊丹十三さんが大好きだ。伊丹十三さんの作る世界観が大好きだ。松山市にある「伊丹十三記念館」には、池内岳彦さんであり、音楽愛好家であり、商業デザイナーであり、俳優であり、エッセイストであり、イラストレーターであり、料理通であり、乗り物マニアであり、テレビマンであり、猫好きであり、精神分析啓蒙家であり、CM作家であり、映画監督である伊丹十三さんの世界がぎっしりと詰まっている。中村好文さんの設計した建物 […]
僕の通っていた高校の裏にはお城のある山があった。高校の裏に山があるということは、その山で青春の匂いのする様々な行為が行われるということである。良い香りのしそうな行為もあれば、臭そうな匂いが漂う行為もある。運動部はトレーニングという名目で山に行く。音楽活動の練習も山が舞台。男子生徒と女子生徒が仲良くなって行くのは山の裏の方。体育祭の応援団の練習も山。授業をさぼってタバコを吸いに行くのも山。桜が咲いた […]
豪雪地帯の僕の生まれ育った町は高校二年生の冬に五六豪雪と言われる記録的な豪雪に見舞われた。毎日毎日屋根雪を下すうちに、庭や道路の雪の高さは屋根を越えてしまい、屋根雪を上げるくらいまで雪が降った。あちこちで「この下には電線が埋まっています」という立札を見た。確かその冬に何かの選挙があったが、春になって雪が融けたら、電柱のほぼてっぺんのところにポスターが貼ってあるのを見た。JR(当時は国鉄)も国道も閉 […]
新型コロナウイルスの感染拡大対策で中止を余儀なくされた甲子園。この期間、高校球児たちとその指導者たちを取材し、彼らが何を考えどのように行動し何を感じたのかを記した一冊。ずっと憧れてきたものを掴み取るためにずっと頑張ってきたのに、新型コロナウイルスによって夢を奪われたり何かを見失ってしまったのは、何も高校球児だけではない。多くの若者が、そして若者だけではない多くの人にとって、大きな影響を受けたはずだ […]
埼玉県行田市にある足袋メーカーがランニングシューズ開発に社運を賭け、人生で一度は負けを経験した人たちがそれを応援し、巨大な組織と目に見えない力に立ち向かってゆく。この小説がドラマ化された後に行田市にある和菓子の売れ行きが良くなったということだけれど、そのエピソードも含めて「陸王」のストーリーなのかと思ってしまう。 本: 「陸王」 池井戸潤 ブックカバー: 十万石