あの歌がきこえる 重松 清
- 2021.05.15
僕の生まれ育った町はテレビで放送される民法が二局しかなかったせいで、「ザ・ベストテン」を見ることができなかった。高校三年生の秋、友達の家でセブンスターをふかしながら時間を潰していた時のこと。友達が「なあ東京の大学受けに行かんか?」と言い出した。驚いた。なんせ自分の知ってる人の中で東京に行ったことのある人間なんて誰もいない。「あほか、俺らこんな勉強しとらんのに東京の大学なんて受かるわけないやろ。」す […]
僕の生まれ育った町はテレビで放送される民法が二局しかなかったせいで、「ザ・ベストテン」を見ることができなかった。高校三年生の秋、友達の家でセブンスターをふかしながら時間を潰していた時のこと。友達が「なあ東京の大学受けに行かんか?」と言い出した。驚いた。なんせ自分の知ってる人の中で東京に行ったことのある人間なんて誰もいない。「あほか、俺らこんな勉強しとらんのに東京の大学なんて受かるわけないやろ。」す […]
随分と大変な本を読んでしまった。イラストレーターでありグラフィックデザイナーである和田誠さんが施した本の装丁についての記録。和田さんは依頼を受けると必ずゲラを読み、装丁の構想を描き、イラストを描きあるいは調達し、レタリングをつくり、レイアウトし、インクを指定し、紙質や厚さを確認し、帯の取り外し前後でどう変わるのかも考えて一冊の本を装丁する。シリーズものなら並べて置いたときにどう見えるのかも考える。 […]
「佐渡はさつまいもをふたつ並べてくくったような形をしています。今いる場所はさつまいもが西側でひっついているところ。明日の朝6時にここをスタートして北側のさつまいもの海岸線を南側のさつまいもと東側でひっついているところまで行ってください。ここで仮眠を取るかそのまま進むかを選択して、南側のさつまいももぐるっと廻って明々後日の朝6時までに今いるここまで戻ってきてください。距離は208キロです。仮眠所以外 […]
倉本さんが富良野に暮らしだしてからの日々の出来事を綴ったエッセイ。この時期に出合った人たちやエピソードであの「北の国から」が作られている。登場人物は皆さん実在の富良野の人たち。お食事処「くまげら」で普段から酒を酌み交わしていた人たちなのだ。心に沁みるシーンがたくさんあったドラマだったけれども、ラーメン屋で五郎さんが怒鳴るシーンは本当に涙が止まらなかった。 (この本は富良野のお食事処「くまげら」で買 […]
これは少し不思議なパン屋の幸せを分けてもらえるお話。では僕の好きなパン屋さん「かまどの火」を。千葉県鴨川市の金束。内房からも外房からも同じくらいの距離なので、ちょうど房総半島のど真ん中。車が一台ようやく通れるくらいの山道。細い道はガードレールなんていうものはなく道を外してしまうと転落。街灯もなく暗くなると動物もうろうろ。そんな山道をどんどんと登って行く。本当にこんなところにパン屋があるのかと途中で […]
大阪に暮らしていた時、料理学校の先生と一緒に料理を作ることができる体験イベントが時々新聞の広告欄に掲載されていた。料理界の東大と言われる辻あべの調理師専門学校の大人版体験入学で、何度か応募して参加したことがあった。先生は料理の手順を説明する際に必ずその理由を説明してくれた。材料の物理的特性を考えた切り方、調味料を加える順番と化学反応の関係、材料の熱の伝わり方と収縮について。深い理論で裏付けされてい […]
一富士二鷹三茄子。富士山の見えるスーパーを営む鷹子の妹を中心に繰り広げられる家族の愛のドラマ。人の命ってどんどん繋がっている。生きているか死んでいるのかは別の話。桜が咲く度にまた読もう。 本: 「さざなみのよる」木皿泉 ブックカバー: 伊藤園
朝日くんは小学校四年生、小樽に暮らしている。朝に生まれたから朝日と名付けられた。ある日のこと黒猫を差し上げますという張り紙を見つけて夢中になってしまう。朝日くんは黒猫を飼うことを許してもらえるのだろうか。朝日くんに飼われる猫は幸せだろうな。なんせ子どもの気持ちも大人の気持ちもよくわかる朝日くんのことだから、きっと猫の気持ちもわかるはず。そう言えば、小樽に住む僕の友人も猫を飼っていると話していたよう […]
面倒なことはいつも私に・・・ 嫌なことはいつも僕に・・・ そう思っていても実は周りのみんなに知らないうちに支えられ助けられていることもあるのかも。そしていつかそのことに気付く日がやってくるのかも。三人屋は、朝日・まひる・夜月の三姉妹がそれぞれ朝と昼と夜を切り盛りする商店街の店。僕の住む町にも是非。一日三回毎日通ってしまう。 本: 「三人屋」 原田ひ香 ブックカバー: 鳥と卵の専門店「鳥玉」
考古学が趣味の年老いた桃子さんが自分の歩んできた人生を考古学するお話。十年一昔と言われることを考えると、人が老いてゆくということは七つも八つもの昔からの歴史を歩むということである。ひとりひとりの生き方が立派な考古学である。桃子さん、お元気で長生きしてください。 本: 「おらおらでひとりいぐも」 佐竹千佐子 ブックカバー: MAMMUT