つむじ風食堂の夜 吉田篤弘
- 2024.12.09
- 本
横浜の港が見える丘公園の麓の住宅地に居酒屋の千葉屋がある。このお店は魚屋さんが経営しているので、とても美味しい魚を食べることができる。そのことが理由がどうかはわからないが、このお店にはたくさんの猫がいる。肴がテーブルの上に出てきて、さあ頂こうかなと思うと、客の横やテーブルの端っこにさっと猫が現れて肴を見つめる。ただし、ここの猫たちはとても躾が良くできていて、決して肴に手を出すことはないのだ。猫に申し訳のない気持ちで肴をつまみに酒を飲む。このお店の数件隣に銭湯があった時は、冬の寒い日に銭湯で温まってから美味しく酒と肴と猫を楽しんだ。今から思うと、居酒屋と銭湯の間の小さな辻には、あの日つむじ風が舞っていたような気がする。
本: 「つむじ風食堂の夜」 吉田篤弘
ブックカバー: RONDE
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