天ぷらにソースをかけますか? 野瀬泰申
- 2024.01.21
- 本
毎日のように食する和食であるが、和食の定義について考えたことは一度も無かった。ただ漠然と、食する地域や国民を定めることで、他の地域や国民の食するものと区別しているくらいにしか思っていなかった。特別展「和食」という博覧会に行ってみて、それまでの自分の考えが実に浅はかなものなのか分かった。和食とは、手に入る食材を最大限に利用し、発酵など自然の摂理に従い、季節や気候と調和させながら、食事を作り楽しむ工夫のことを指していることがわかった。すなわちレシピではなく食事の考え方そのものが和食なのだ。味噌汁の味が家によって異なるのも、雑煮が地域によって異なるのも、ご当地ならではの食べ物があるのも、全て和食だからのこと。レシピを標準化することなく、大切な考え方をあいまいなルールで伝えてゆく、これが和食が発展してきた日本的な理由ではなかろうか。天ぷらにソースをかけるのもかけないのも、そのどちらも立派な和食なのだ。
本: 「天ぷらにソースをかけますか?」 野瀬泰申
ブックカバー: 特別展「和食」クッキー
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