小隊 砂川文次

  • 2022.08.28
小隊 砂川文次

豪雪地帯の僕の生まれ育った町は高校二年生の冬に五六豪雪と言われる記録的な豪雪に見舞われた。毎日毎日屋根雪を下すうちに、庭や道路の雪の高さは屋根を越えてしまい、屋根雪を上げるくらいまで雪が降った。あちこちで「この下には電線が埋まっています」という立札を見た。確かその冬に何かの選挙があったが、春になって雪が融けたら、電柱のほぼてっぺんのところにポスターが貼ってあるのを見た。JR(当時は国鉄)も国道も閉鎖し、町は完全に孤立した。物資はヘリコプターで運ばれてきた。ひとつ年上の高校三年生は、雪に埋まっているJRの線路を通って共通一次試験の会場のある県庁所在地の町まで30キロ以上歩いて受験に行った。そんな町の救援に三重県から陸上自衛隊がやってきた。雪になれていない自衛隊員は、最初のうちは滑って転んだりして全く除雪作業の戦力にはならなかった。しかし小学校の体育館で寝泊まりしながら毎日除雪作業をしているうちにどんどんと作業の腕が上がり、ついに孤立していた町にも物資や燃料が届けられるようになった。あの時、小学校の体育館で自衛隊員は何時に起床してどのようなものを食べていたのだろう。交流の機会が全く無かったのが残念だ。今日も日本のどこかで災害が発生し、自衛隊員の努力と活躍によって国民の生活が守られている。

本: 「小隊」 砂川文次
ブックカバー: 陸上自衛隊幹部候補生学校 プリントクッキー