おしょりん 藤岡陽子

  • 2024.02.15
おしょりん 藤岡陽子

僕は毎朝30分かけて中学校に通っていた。僕の家は田んぼの中にぽつんとあり畦道は途中で行き止まりになっているため、中学校に行くためには幹線道路に出て遠回りして歩いてゆく必要があった。ところが冬になると、田んぼに降り積もった雪がかちかちに凍る朝が時々あり、その日は中学校まで田んぼの上をほぼ一直線に歩いてゆくことができた。そのことを「空の上を歩く」という呼び方をしていた。山を隔てた反対側の町ではこのことを「おしょりん」と呼ぶらしい。このお話は、鯖江で眼鏡つくりを始めた兄弟とその家族や仲間たちの人間ドラマである。日本にはその地域に根付いた数多くの地場産業や伝統工芸が残っているが、そのひとつひとつにその地域の「おしょりん」があるはずだ。全国にある「おしょりん」を知ってみたいと思った。

本:「おしょりん」 藤岡陽子
ブックカバー: めがねミュージアム