庭 小山田浩子
- 2021.02.10
- 本
僕の実家は二度の引っ越しをして、現在の家は三件目である。小さい頃に住んでいた家の裏庭にはぐみの木があって周りにはよくヘビがいた。塀の向こう側では近所のホルモン屋が二匹の山羊を飼っていた。中学生の時に四方を田んぼに囲まれた家に引っ越しをした。高校を卒業するまで住んだけれどもどんな庭だったのか全く記憶に無い。覚えているのは夏の夜に田んぼのカエルが一斉に鳴き出しそれはそれはにぎやかだったこと。そして暮らしたことは無い現在の実家は紫陽花が見事だ。しかしこの紫陽花、実は隣の家の紫陽花が成長して塀を乗り越えてやってきた借景である。初夏には立派に大きく咲いた紫陽花にたくさんの蜻蛉が羽を休めている。
この本は庭をめぐる小さなお話の集まり。小さなお話だけれどもひとつひとつ大切なこと。どこの庭にもその家のその家族の物語があるのだ。散歩の途中で見える人様の庭がなんだか少しだけ気になってきたぞ。
本:: 「庭」 小山田浩子
ブックカバー: MOVING TEXTILE Gedecana