牧野富太郎の恋 長尾剛

  • 2023.04.29
牧野富太郎の恋 長尾剛

身体が弱かった幼少の頃の僕は、一緒に暮らしていた明治生まれの祖母にドクダミ茶を飲まされていた。苦いドクダミ茶を飲むのは子供にとって苦痛以外の何ものでもなく、鼻と舌がそれが何かを感じ取る前に一気に流し込むように飲むしか方法がなかった。道端を歩いていてドクダミを見つけると、それだけでドクダミ茶を飲む瞬間を思い出してしまうので、思わず目をそらしていた。きっと牧野富太郎さんくらいに探求心があれば、その花や葉からいろんなことを想像することが出来たのだろう。そういうことができないから凡人なのだ。それにしても、牧野富太郎さんの功績の陰には彼を支えた家族の大きな愛があったなんて知らなかった。牧野博士をモデルにした「らんまん」のお陰で、博士の学術研究の書だけではなく、家族のドラマも知ることができた。次に高知に行くときは迷わずに牧野植物園へ行こう。

本:「牧野富太郎の恋」 長尾剛
ブックカバー: AUDREY