コーヒーと恋愛 獅子文六
- 2021.10.10
- 本
僕は以前は挽いた豆を買ってきて珈琲を飲んでいた。オフからオンへ切り替えるスイッチの役目として何かを開始する前に珈琲を飲んでいた。この頃はどちらかと言うと酸味の強い珈琲が好きだった。自分で豆を挽くようになってからは、珈琲は何かひと仕事を終えた後のオンからオフへの切り替えるスイッチへと役目が変わった。豆を選んでハンドミルで挽きお湯を沸かしてゆっくりとドリップしてゆく時間で僕はオンからオフへシフトしてゆくことができる。そして珈琲の好みが複雑になり、酸味の強い珈琲が飲みたい時もあれば苦みの強い珈琲を飲みたい時も出てきた。どういう時に酸味の強い珈琲が飲みたくなり、どういう時に苦みの強い珈琲を飲みたくなるのか、自分でもさっぱりわからない。ひと仕事終わったところで珈琲でも飲もうかと思った途端に僕の脳が酸味か苦みかの指令を出してくるのだ。自分のことだというのに全く予測できないしメカニズムもわからない。そう、珈琲も恋愛も自分のことなんて全くわからないのである。
本: 「コーヒーと恋愛」 獅子文六
ブックカバー: 豆虎 赤坂
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