52ヘルツのクジラたち 町田そのこ

  • 2023.09.03
52ヘルツのクジラたち 町田そのこ

友人が渋谷区で「いるか家」をやっている。ここは行き場を見失ってしまった子供たちのための居場所である。しかし「いるか家」は、子供たちのスペースであるだけではなく、大人へも開かれたスペースであるという。現代は子供であれ大人であれ誰もが様々な問題を抱えながら生きている社会である。こういった「いるか家」のような隙間が社会には必要なのだろうと、友人のお話を聞いてつくづく思った。 社会で自分の居場所を探しながら生きている人たちが、懸命に自分のための隙間を作ってゆくお話が「52ヘルツのクジラたち」。僕は、このお話を読んで「いるか家」の意味を改めて認識した。世の中は全く公平ではなく、残酷で冷たい。頑張ったり我慢したりすることでなんとかなることなんて、ほんの僅かだ。それでも幸せになる権利だけは誰もに平等に与えられていると信じたい。

本: 「52ヘルツのクジラたち」 町田そのこ
ブックカバー: JINS