哀しい予感 吉本ばなな
- 2020.01.28
僕にとっては、学校の音楽の先生というのは少しミステリアスで知的で、ちょっと親しくなりたいのだけれども近づいてはいけないような不思議な存在でした。ピアノも弾けるし、短調とか長調とかなんだかよく理解できない難しいことを知っているし、生まれも育ちも自分とは全然違う上流の人なのだろうと思わせる雰囲気がありました。音楽の先生というのは大抵そのような存在なのではないかと思います。 このお話の中の音楽の先生もと […]
僕にとっては、学校の音楽の先生というのは少しミステリアスで知的で、ちょっと親しくなりたいのだけれども近づいてはいけないような不思議な存在でした。ピアノも弾けるし、短調とか長調とかなんだかよく理解できない難しいことを知っているし、生まれも育ちも自分とは全然違う上流の人なのだろうと思わせる雰囲気がありました。音楽の先生というのは大抵そのような存在なのではないかと思います。 このお話の中の音楽の先生もと […]
仕事で数か月イタリアに滞在したことがある。イタリア半島の東側にある中部のペスカーラという沿岸に面した町。当時は海の向こう側のユーゴスラビアは紛争中だったが、そんなことが信じられないくらい美しい海だった。朝になるとその海岸沿いでトロ箱に魚を並べて売る人たちもいた。その町のはずれの港のすぐ前に木曜日と金曜日だけ営業するリストランテがあった。看板も出ていないシンプルなお店だった。オリーブオイルと塩をひと […]
医療の技術は日進月歩である。人間の身体は臓器レベルから細胞レベルへ更に遺伝子レベルにまでメカニズムが解明され、世界中の科学者研究者により新しい治療法や薬が開発される。もしかすると将来はショートショートクリニックのような画期的な治療法が実現されて私たちの生活は格段に改善されるかもしれない。なんせ身体から一旦骨を抜き取ってリフレッシュすることで骨休めをしたり、脳から記憶の糸を取り出して綺麗に洗って元の […]
皆川さんはアパレルのデザイナーでもありテキスタイルのデザイナーでもある。つまり皆川さんの創る洋服は糸の段階からデザインされている。何年も着て生地がようやく擦り切れてきた頃に裏側に仕組んである糸が綺麗に顔を覘かせてくるようなテキスタイルで作られている。流行に左右されず一生をかけて着ることの出来る洋服を作っているのである。独特の世界観があって魅力的であるが、商品は女性向けのラインのみの構成なので男性に […]
柳宗悦さんが戦前に日本各地を旅して、その土地で作られてその土地の日常生活に使用されている手仕事による工藝品を取材した学術研究。ただ単に日本各地を旅してその土地の工藝品を紹介するだけなら本のタイトルは「日本の手仕事」ということになるのであろう。この本のタイトルは「手仕事の日本」である。日本という国は北から南まで気候風土が様々に富んでおり、それ故に人々の暮らし方も異なりその暮らしに必要となる道具もまた […]
関西に暮らしていた時、近所のスーパーマーケットでたこ焼き粉のキャンペーンを実施していて、たこ焼き粉を一袋買ったらたこ焼き用の鉄板がおまけに付いてきたことがあった。そういう訳で我が家はたこ焼き用の鉄板を買ったことが無いのにたこ焼き用の鉄板が三つもある。関西で暮らすということは食生活の中に粉ものがかなり大きく入り込んでくるという事であり、粉ものと関わらずに生きていくことは不可能という事である。親しい友 […]
穂村さんってどんな人なんだろう。これは食べもののエッセイであることには違いないのだが、著名なレストランや珍しい食材あるいは海外の食事が登場するわけではない。普通の人たちが普通の日々に普通に食べている普通の食べもののエッセイである。それなのにひとつひとつの食事がとても魅力的に思うのは、そこにコミュニケーションがあるからだ。 大学生の時に住んでいた学生寮4階の向かいの部屋には、陳さんという香港からの留 […]
大学生の時に紙幣が変わることがあった。新しい紙幣が出回ってすぐに学校の近くの酒屋で焼酎を買って新しい五千円札を出したら、お釣りに古い紙幣で九千円ほど返ってきた。おそらくまだ見慣れない新しい紙幣で五千円と一万円を間違われたのだと思う。学生だった僕は、お店の人にお釣りを間違えていることを言い出せず、そのままお店を出てしまった。「さがしもの」は「この本が、世界に存在することに」を文庫化するにあたり改題し […]
江戸から明治にかけて近代国家へと変わっていく日本を動かした人々の陰には、その人たちに影響を与えた様々な人たちがいた。開国ニッポンはその人たちの人間模様を描いた歴史小説。未知の世界に興味を持ち、その世界を知っている人に教えをもらい、新しい社会を創造する。開国ニッポンの日の出を作ったのは紛れもなく人と人の出逢い。先日、芸術の世界で第一線で活躍されている人たちの話を聞く機会があったが、皆さん口々に今の仕 […]
旭山動物園に行った。遂に行った。この本を読んで行ってみたくなった。正確に言うと、この本を書いた人が働いていた動物園であれば面白くない訳が無い、是非行かなければならないと思った。そしてその期待は裏切られなかった。期待以上であった。この本を書いたあべ弘士さんは、旭山動物園で25年間飼育員を務められた絵本作家です。旭山動物園はサインや解説がすべて手作り。あべさんのような絵心のある職員さんがたくさん働かれ […]