杉田 昌隆

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今日もうまい酒を飲んだ 広小路尚祈

  • 2020.03.10

那覇の国際通りの繁華街の喧騒から離れた安里のディープな街にある琉球料理と泡盛のお店「うりずん」。カウンターに座ってお酒が出てきたところで、隣のおじさんに「かんぱーい」と声をかけられた。四方山話をたくさん語ってくれた後に「じゃあ三線弾くよ」と言って店の壁にかけてある三線で島唄を数曲唄ってくれた。その後、反対側の隣にイタリア人がやってきた。三線のおじさんとイタリア人はお互いが勝手に自分の言葉で話しなが […]

動物詩集 室生犀星

  • 2020.02.16

子供の頃、ぼくはジャノメチョウが怖かった。同じ形なのにモンシロチョウもアゲハチョウも綺麗だと思えたけど、ジャノメチョウは羽に付いた目でにらまれるから怖かった。あんな恐ろしい表情の虫は他にはいない。大人になってからジャノメチョウを見たことが無いが、それは住んでいる場所が違うからだろうか、それともジャノメチョウは子供にしか見えないのだろうか。今度見ることがあったら羽に穴が開くくらいしっかりと観察してや […]

春を背負って 笹本稜平

  • 2020.02.15

「春を背負って」は小さな山小屋の四季を通した人間模様を描いたお話。積雪の期間に閉鎖していた山小屋を開けるために春になると山小屋のスタッフは春を背負って山を登ってくる。そしてその山小屋を訪れる人たちもそれぞれ何かを背負った人生を歩んでいる。人は夢を追いかけて何かを背負いこみ、欲を出してまた何かを背負いこむ。そして時々は背負ったものを降ろしに山にやって来る。春は全ての人にとって待ち遠しい季節である。 […]

カレーライス!! 大盛り 杉田淳子編

  • 2020.02.09

インドでは数多くのカレーのレシピが存在するという。暑い南部では身体を冷やすスパイスが好まれ、寒い北部では身体を温めるスパイスが好まれる。地域によって食材が異なる。カーストによって食べるものや食べてはいけない食材も異なる。宗教によっても食べれるものに制限がある。これらの数だけカレーの種類も異なるので、結果的には数えきれないカレーの種類が存在するらしい。僕はジパングという地域のイエというカーストのカレ […]

古道具屋 中野商店 川上弘美

  • 2020.02.09

不要になったものをそれを必要な人に見つけてもらう場を提供するのがリサイクルショップ。古いものに希少性や歴史的価値あるいは芸術的価値を与えることでそのものの魅力を最大限に引き出し取引を行うのが骨董屋。人の思いや気持ちの詰まった道具を買い取ることでその人が気持ちの整理をすることをほんの少し手助けするのが古道具屋。中野さんの古道具屋、いい仕事します。そしてそのお店で働く皆さんが大好きです。 本: 「古道 […]

哀しい予感 吉本ばなな

  • 2020.01.28

僕にとっては、学校の音楽の先生というのは少しミステリアスで知的で、ちょっと親しくなりたいのだけれども近づいてはいけないような不思議な存在でした。ピアノも弾けるし、短調とか長調とかなんだかよく理解できない難しいことを知っているし、生まれも育ちも自分とは全然違う上流の人なのだろうと思わせる雰囲気がありました。音楽の先生というのは大抵そのような存在なのではないかと思います。 このお話の中の音楽の先生もと […]

皿の中に、イタリア  内田洋子

  • 2020.01.25

仕事で数か月イタリアに滞在したことがある。イタリア半島の東側にある中部のペスカーラという沿岸に面した町。当時は海の向こう側のユーゴスラビアは紛争中だったが、そんなことが信じられないくらい美しい海だった。朝になるとその海岸沿いでトロ箱に魚を並べて売る人たちもいた。その町のはずれの港のすぐ前に木曜日と金曜日だけ営業するリストランテがあった。看板も出ていないシンプルなお店だった。オリーブオイルと塩をひと […]

ショートショートクリニック 田丸雅智

  • 2020.01.25

医療の技術は日進月歩である。人間の身体は臓器レベルから細胞レベルへ更に遺伝子レベルにまでメカニズムが解明され、世界中の科学者研究者により新しい治療法や薬が開発される。もしかすると将来はショートショートクリニックのような画期的な治療法が実現されて私たちの生活は格段に改善されるかもしれない。なんせ身体から一旦骨を抜き取ってリフレッシュすることで骨休めをしたり、脳から記憶の糸を取り出して綺麗に洗って元の […]

ミナを着て旅に出よう 皆川明

  • 2019.12.31

皆川さんはアパレルのデザイナーでもありテキスタイルのデザイナーでもある。つまり皆川さんの創る洋服は糸の段階からデザインされている。何年も着て生地がようやく擦り切れてきた頃に裏側に仕組んである糸が綺麗に顔を覘かせてくるようなテキスタイルで作られている。流行に左右されず一生をかけて着ることの出来る洋服を作っているのである。独特の世界観があって魅力的であるが、商品は女性向けのラインのみの構成なので男性に […]

手仕事の日本 柳宗悦

  • 2019.12.22

柳宗悦さんが戦前に日本各地を旅して、その土地で作られてその土地の日常生活に使用されている手仕事による工藝品を取材した学術研究。ただ単に日本各地を旅してその土地の工藝品を紹介するだけなら本のタイトルは「日本の手仕事」ということになるのであろう。この本のタイトルは「手仕事の日本」である。日本という国は北から南まで気候風土が様々に富んでおり、それ故に人々の暮らし方も異なりその暮らしに必要となる道具もまた […]

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