杉田 昌隆

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氷点 三浦綾子

  • 2020.10.30

北海道の旭川、駅を出て忠別川にかかる大きな橋を渡り郊外に向かう通りが「氷点通り」。その突き当りは広大な「外国樹種見本林」が広がっており、その入り口に三浦綾子記念文学館がある。この林が「氷点」の舞台。林の中には美しい美瑛川が流れている。ここがまさに「氷点」の話がクライマックスを迎える場所。ある土地に行ってその土地で採れた食材とその土地の水で作られたお酒が最高に美味しいのと同様に、ある土地に行ってその […]

生きるぼくら  原田マハ

  • 2020.10.11

祖母と暮らしていた子供の頃、僕の家では一家5人の食べるお米を自宅の前の田んぼで作っていた時期があった。手伝った記憶があまり残っていないのは、おそらく農家をしていた親戚が機械を使って効率的に作業をしてくれたからだと思う。「生きるぼくら」を読むと、お米を最も非効率的に最も記憶に残る方法で作ってみたくなる。お米を育てるのではなく、お米に育ててもらっているのだから。 本: 「生きるぼくら」 原田マハ ブッ […]

i  西加奈子

  • 2020.09.26

10年以上前にアメリカのユタ州に仕事で定期的に行っていた頃、いかつい身体のボブがよく世話をしてくれた。ボブには四分の一日本人の血が混じっていて、血が繋がっている日本人が一人だけ存命で名古屋近郊に住んでいた。そのボブが一度だけ日本に来た事があって、翌日に名古屋に行きたいと突然言い出した。住所を知っているだけだから一人では行けないし、言葉も通じないから、僕に一緒に来てくれと言う。もしも留守で会えなかっ […]

アンフォゲッタブル 松宮宏

  • 2020.09.13

神戸の三ノ宮駅から元町駅の電車の高架下は少し不思議なお店がぎっしりと軒を並べるなかなか魅力的な界隈であるが、その高架下を元町から神戸駅の方向に更に進んでいくと雰囲気が少しずつ怪しくなってきてこれまたなかなか神戸らしい魅力的な空間となる。その辺りの神戸の街を舞台にしてちょっと明るくてちょっと怪しい人たちがジャズで街を盛り上げるお話。神戸がますます好きになる。 本: 「アンフォゲッタブル」 松宮宏 ブ […]

空しか、見えない 谷村志穂

  • 2020.08.22

凄く良い!いつまでも青春。中学校の遠泳のチームが卒業後に仲間の事故死を機に再開してまた同じ海を泳ぐ話。チームメイトに現在のパートナーなども加わり新しいチームに。沖へ出てみんなで空を見上げる。見えるのは空、そして未来。 本: 「空しか、見えない」 谷村志穂 ブックカバー: L’OCCITANE

他人事 平山夢明

  • 2020.08.22

何者かに追われ逃げる。小さな部屋を見つけて逃げ込む。ホッとしたのも束の間、敵が扉に向かってくる気配を感じる。扉を開けられないように内側から扉の取っ手をしっかり掴む。ところが一風変わった扉の構造で、取っ手を掴んだ手は扉の向こう側に出ている。敵はその手に熱湯をかけてきた。それでもこの扉を引っ張る手を離すわけにはいかない。すると今度は扉ごと取り去ってしまおうと敵は扉とドア枠の隙間にノコギリを入れてきた。 […]

四万十川 あつよしの夏 笹山久三

  • 2020.08.17

この本を読んで無性に四万十川に行きたくなった。江川崎という町の役場でカヌーを借りることができるというので、四万十川を下ってみようと思い立った。大学を卒業して二年目の夏のことであった。同級生を誘った。高知駅で待ち合わせをした日は豪雨だった。高知から江川崎に行く列車からは豪快な四万十川が車窓の左右に方向を変えて見えたが、増水のため沈下橋は見えなかった。二人ともまだ若くお金の余裕もなく江川崎の駅を宿替わ […]

でーれーガールズ 原田マハ

  • 2020.07.19

毎年七月になると岡山から桃が届く。岡山と言えばでーれーガールズ。甘い桃にかぶりついて果汁をぽたぽたと垂らしながら、でーれーガールズを読もう。 本: 「でーれーガールズ」 原田マハ ブックカバー: 岡山 晴富 帯: 「白桃に吉備路の空の青さあり」沢木欣一

人間はどこまで耐えられるのか F・アッシュクロフト

  • 2020.07.16

鳥取の米子にある皆生温泉の海を3キロ泳いで、大山の山を140キロ自転車乗って、皆生温泉から境港までの往復42キロをマラソンする「全日本トライアスロン皆生大会」。1981年に日本で初めてトライアスロンのレースが開催された聖地です。毎年七月の海の日の三連休に開催されるため兎にも角にも暑さとの闘いとなり「灼熱皆生」とも呼ばれています。2018年に参加した際は気温が35度を超えいつもにも増して灼熱地獄とな […]

山の朝霧 里の湯煙 池内 紀

  • 2020.06.29

積雪期の安達太良山で山腹の「くろがね小屋」の温泉に浸かり一泊し翌朝に山頂を目指す予定で出発したのだけれども、夜半から荒天に向かうという天気予報になったため、くろがね小屋の白いお湯に浸かりその日のうちに速やかに下山した。下山後は麓の岳温泉の村営の湯治宿に宿泊した。冬の東北の湯治宿は静かで趣があり味わい深い一晩となった。翌朝は思いもよらずに時間が出来たため地元の酒蔵「奥の松酒造」を訪れて試飲を楽しんだ […]

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