2024年

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羊と鋼の森 宮下奈都

  • 2024.04.19

学校に設置してあるピアノを調律する音を偶然に聞いてしまった生徒が、その後に周囲の人に育ててもらいながら一人前の調律師となってゆくまでのお話。偶然に見てしまったことの衝撃によって人生が決定づけられることは、実際にあることだと思う。夢を追うことは苦しくて辛いこともあるけれども、それ自体がとても尊いことで、そのことを応援し見守る人たちの心も美しい。夢を追う全ての人の森に何かが宿り何かが育ち、そして何かが […]

飛行機の乗り方 パラダイス山元

  • 2024.03.03

旅の移動は遅ければ遅いほど面白いと思っている。新幹線よりも迂回してでも在来線特急で、特急よりも各駅停車で、もしも船で行けるならば迷わず船へ、列車の選択はなし。そんな風に思っているので、飛行機は仕事でどうしても乗らないといけない時以外は使うことがない。離陸するとどこにも寄らずにいきなり目的地に到着してしまうところがどうも好きになれない。コロナ渦で仕事で移動することがすっかり無くなってしまったので、い […]

おしょりん 藤岡陽子

  • 2024.02.15

僕は毎朝30分かけて中学校に通っていた。僕の家は田んぼの中にぽつんとあり畦道は途中で行き止まりになっているため、中学校に行くためには幹線道路に出て遠回りして歩いてゆく必要があった。ところが冬になると、田んぼに降り積もった雪がかちかちに凍る朝が時々あり、その日は中学校まで田んぼの上をほぼ一直線に歩いてゆくことができた。そのことを「空の上を歩く」という呼び方をしていた。山を隔てた反対側の町ではこのこと […]

天ぷらにソースをかけますか? 野瀬泰申

  • 2024.01.21

毎日のように食する和食であるが、和食の定義について考えたことは一度も無かった。ただ漠然と、食する地域や国民を定めることで、他の地域や国民の食するものと区別しているくらいにしか思っていなかった。特別展「和食」という博覧会に行ってみて、それまでの自分の考えが実に浅はかなものなのか分かった。和食とは、手に入る食材を最大限に利用し、発酵など自然の摂理に従い、季節や気候と調和させながら、食事を作り楽しむ工夫 […]