As Slow As Possible

本とブックカバーが出逢う物語

木に学べ 西岡常一

  • 2024.10.23

飛鳥時代に建てられた法隆寺の大修理や薬師寺の復元などの大仕事を果たした宮大工の西岡常一棟梁が語る、木のこと、山のこと、鉄のこと、瓦のこと、水のこと、地面のこと、気候風土のこと、道具のこと、作法のこと、食事のこと、酒のこと、しきたりのこと、師弟関係のこと。宮大工の仕事というのは、生き方そのものだ。 木の癖に注意をして使えば気も喜び長持ちし、弟子の性格に注意をして使えば弟子も育つ。現代の日本人が忘れて […]

夏の庭 湯本香樹実

  • 2024.09.22

学生時代に月の家賃が300円の学生寮に住んでいた。学生寮の建物は敷地の広さに対してゆったりと建っており、空いたスペースは近所の子供たちの格好の遊び場となっていた。その遊び場に面した一階の部屋にはTさんという先輩が暮らしていた。とある日曜の午後、Tさんの窓の先に転がってきたボールを取りにきた少年三人は、窓から昼を過ぎても寝ているTさんを覗いて「死んでんじゃないの?」と話していた。気配を感じたTさんが […]

橙書店にて 田尻久子

  • 2024.08.25

熊本に行きたい。熊本に行かねばならない。熊本市内の商店街で雑貨屋と本屋兼喫茶店を営む田尻久子さんが、どのようにしてこの街にお店を開き、どのようにして人とつながっていったのかを記したエッセー集が「橙書店にて」。これを読んだら、実際にお店に行ってみたくなるし、田尻さんと会ってお話を聞いてみたくなる。街から本屋がどんどんと減っているが、田尻さんのような店主や橙書店があちこちの街にあったら世の中は随分と楽 […]

ヨモギドラゴンの階段話

  • 2024.07.28

草木染の一点ものの洋服のブランドBotanic Greenの直営店、原宿「ヨモギドラゴン」のご協力で、お店に上がる階段スペースに、ブックカバーと本を展示をさせていただきます。階段は暑いですので、本は店内に持ち込んでご自由にお読みください。クラフトビールやソフトドリンク、店主の自家焙煎の珈琲もご注文いただけます。 最寄り駅は「原宿」「明治神宮前」。神宮前交差点近く、キャットストリートの一本裏の更に細 […]

ランウェイ・ビート 原田マハ

  • 2024.07.05

自分たちで洋服を作って自分たちで販売をしている友人の夫婦がいる。自分たちの工房で糸や布を染め、自分たちの信頼する人に後工程となる縫製や刺繍などを依頼して洋服を作り、自分たちの信頼できるお店でPOPUP SHOPを開き、自分たちの手で販売している。 地球の遠く離れたところで安く作って大量に輸入し、季節が終わって売り逃したものを大量に廃棄するという洋服の作り方が市場のほぼ全てな現代に、エコロジーでロー […]

本日は、お日柄もよく 原田マハ

  • 2024.06.14

四月のとある日、午後から結婚式なのだろうか、桜の下で新婚夫婦の写真撮影が行われていた。撮影が終わり一団さんが引き上げていった場所にお嫁さんのご両親と思われる夫婦が残り、正装のお父様が桜を背景にした留袖のお母様を撮ろうとしていた。「お撮りしましょうか?」と声をかけると、「あっ、そうですか。すみませんね。いやあもう本人たちよりも親の方がウキウキしていて、恥ずかしいですね。」と言いながら一眼レフを渡すお […]

800日間 銀座一周 森岡督行

  • 2024.05.06

銀座でたった一冊の本だけを販売する「森岡書店」を営む森岡さんが、コロナ渦に資生堂の「花椿」に連載をした「現代銀座考」。かつて最も華やいで最もモダンであった時代の銀座と、現代の銀座を、タイムマシーンに乗って行ったり来たりすることのできる銀座の図鑑。銀座の魅力は街と店と人。日本中あちこちに「銀座」と名の付く通りがあるけれど、やはり東京の銀座はホンモノの銀座である。変わりゆく銀座と変わらない銀座、昔の銀 […]

禅と食 枡野俊明

  • 2024.05.02

何も豪華な食材が必要なわけではない。その時期にあるもの、そこにあるものを使い、そこにいる人と自分のために、ただ料理をすることだけに集中して作る。何も豪華な食器が必要なわけではない。質素な器に季節を盛り、感謝をし、気持ちを落ち着かせて丁寧にいただく。粗食であればあるほど、そこには贅沢な空間と時間が出来る。現代の生活でついつい忘れてしまいがちな、とても大切な本当のごちそうを改めて教えてもらった。 本: […]

日本で見られる現代アート傑作11 秋元雅史

  • 2024.04.30

10年近く前のことだと思うが、豊島の美術館に行った。その時は雨だった。音や風などの自然を感じるために設られた美術館には、しっとりとした雨音と真っ白な空気が何とも言えず神秘的だった。帰りに船着場の隣の質素なうどん屋で麺を啜っていたら、女将さんが「美術館に行ってたん?」と話しかけてくれた。「あの変な形にコンクリート打つのって、途中で休憩せんと一気に流しこまんといけんのよ。天気予報とか確認しながらね、よ […]

羊と鋼の森 宮下奈都

  • 2024.04.19

学校に設置してあるピアノを調律する音を偶然に聞いてしまった生徒が、その後に周囲の人に育ててもらいながら一人前の調律師となってゆくまでのお話。偶然に見てしまったことの衝撃によって人生が決定づけられることは、実際にあることだと思う。夢を追うことは苦しくて辛いこともあるけれども、それ自体がとても尊いことで、そのことを応援し見守る人たちの心も美しい。夢を追う全ての人の森に何かが宿り何かが育ち、そして何かが […]

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