笑う食卓 面白南極料理人 西村淳
- 2019.07.19
- 本
大学時代に所属していた山岳部は、本当は「山楽部」と書くのではなかったのかと今にして思う。大抵の場合において大学山岳部の山行というのは、目的のルート達成のために食料の軽量化を計り、綿密な計画と日々のトレーニングによって目標を達成する場であり、従って山は食の楽しみを追求する場所ではない。しかし、僕たち山楽部は食糧計画の中に「軽量化」という概念は全くなく、ひたすら山の食事にクオリティを追求していた。冷凍にした肉や魚を持って登れば、少なくとも初日の夜はかなり贅沢な食事が可能となる。すき焼きは定番。刺身は漬けて冊で冷凍するとテン場に着いた頃に丁度良い。雪の上で大根を擦って雪見鍋。ハウスほんとうふ(*)で豆腐を作って麻婆豆腐。チゲ鍋の仕上げにどうしても卵をかけたくて、生卵の運び方も工夫した。残雪の上でスイカ割りをするための荷上げ。シロップを作って天然のかき氷。そして大量の酒。「笑う食卓 面白南極料理人」の頁をめくる度に、あの頃の山の食事を思い出してしまい、本当に笑う食卓となってしまった。
本: 「笑う食卓 面白南極料理人」 西村淳
ブックカバー: SHISEIDO
(*)手作りで豆腐をつくるための素 食品メーカーのハウスより発売されていた。
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