伴走者 浅生 鴨
- 2021.11.07
- 本
両手両脚の無い選手が水泳をしている。しかも五体満足の僕より速く泳いでいる。両腕が無い選手がラケットを口に銜えて卓球をしている。音を頼りに盲目の選手が蹴り出したボールがゴールを決める。東京パラリンピック TOKYO2020 でパラリンピックの光景である。それまで僕はそれぞれの競技を身体に障害を持つ選手たちがハンディを背負って闘うのがパラリンピックだと思っていた。しかし実際にはオリンピックの競技とパラリンピックの競技は全く異なる身体能力を競う競技であり、誤解を承知で言うならパラアスリートは決してハンディを背負っている訳ではなさそうだ。障害を持った選手が闘うからパラリンピックなのではなく、観ている者が自分の考えに障害があることに気付かされるのがパラリンピックである。
浅生 鴨さんの「伴走者」は盲目のマラソン選手とスキー選手とそれぞれの伴走車のお話し。お互いの気持ちを理解したり理解できずに悩んだりしながらレース当日を迎えてゆくまでの心の動きを描いている。伴走者がアスリートを支え、アスリートが伴走者を支える。心に沁みる言葉に溢れた一冊。僕は特に冬のスキーの物語の雪が好きだ。
本: 「伴走車」 浅生 鴨
ブックカバー: はれま
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